研究概要 |
立体構造デバイスの電流電圧特性に界面ラフネスが与える影響に関して,3次元非平衡グリーン関数法(NEGF法)を用いて調べた.ダブルゲート(DG)やゲートオールアラウンド(GAA)MOSFETなどのマルチゲート型デバイスは,ゲートの支配力が強いため,極めて短いゲート長領域でも良好なデバイス特性が得られると期待されている.ゲート長が10nm程度のDG MOSFETとGAA MOSFETにおいてシリコン/絶縁膜界面の界面ラフネスがデバイス特性に与える影響を調べた.本年度,しきい値シフトを,界面ラフネスによる閉じ込めエネルギーの変化に起因する項と,透過関数の減少に起因する項の和で与えられるとして簡易モデルを構築した.簡易モデルは,NEGFシミュレーションの結果とよい一致を示した. チャネルの中央にあるドナー1個がデバイス特性に与える影響を調べた.GAA型,DG型デバイスにおいて,ドナーの有無による伝達特性の違いから,ドナーによるしきい値シフトを見積もった.界面ラフネスの場合と異なり,デバイス構造やシリコン膜厚に対する依存性は小さく,その様子は,クーロンポテンシャルによる障壁の低下を見積もることにより,概ね理解できることが分かった. 越田信義教授と共同研究を行ない,ナノシリコン列における準弾道電子放出のモデル化を行なった.ナノシリコン列において,低エネルギー領域では,トンネル障壁が高いためトンネル時間が長い.しかし,ナノシリコン中では準位の離散性のため,エネルギー緩和時間の方が長く,低エネルギー領域を抜け出て高エネルギーになる確率が高い.この初期加速領域を抜け出ると,トンネル時間が短くなるうえ準連続状態となるため,隣り合うナノシリコン間を弾道的に飛び移ることが可能となる.その結果,初期加速領域におけるエネルギー損失以外は,ほぼ弾道的に活性層を走行し,結果として,準弾道的な電子放出になることが分かった.
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