研究概要 |
本研究では、「複数の機能をもつ配位子」としてホスフォール、アルソールなどの15族ヘテロ原子を含む五員環化合物をとりあげ、その有機金属錯体の化学を展開した。ボスフォールから容易に誘導できるホスフォリド(ホスファシクロペンタジエニル) は、Cp^-と化学的・物理的類似性を有しており、6電子供与体としてη^5配位によりホスファメタロセンを形成する。ホスファメタロセンのリン原子には局在化した非共有電子対があり、2電子供与体としてホスフィン類似の機能がある。この点に着目し、二官能性配位子としてのホスフォールを遷移金属錯体へ応用し、新たな結合・反応性・機能の発現を目指した。 本年度の研究では、オスミウムを中心金属とする世界最初のホスファメタロセンの合成に成功した。ジクロロ(パラシメン) オスミウム二量体と2, 5-ジシクロヘキシルホスフォリドとの反応により、ジホスファオスモセン誘導体がほぼ定量的に得られることを見出した。この反応はホスフォリド上の置換基により大きく影響を受け、2, 5-ジ-1-メンチルホスフォリドでは類似のジホスファオスモセンが良好な収率で得られるが、2, 5-ジ-tert-ブチルホスフォリド、3, 4-ジメチルホスフォリドではメタロセン種は全く得られない。得られたジホスファオスモセンとアセチル求電子剤との反応について検討した。2当量の求電子剤を用いたところ、ホスファルテノセンの反応と同様にP-Os架橋ビニリデン錯体が主生成物として得られたが、Friedel-Craftsアセチル化生成物の生成は認められなかった。また、副生成物として架橋ビニリデン部位がアセチル化された錯体の生成が確認された。ジホスファオスモセンに対して大過剰のアセチル求電子剤を反応させたところ、アセチルビニリデン錯体のみが主生成物として得られる。
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