研究課題
本研究では、金(I)-イソシアニド錯体が、顕著な発光性メカノクロミズム特性を有していることを明らかにした。この錯体は乳鉢中ですりつぶすなどの機械的刺激により、そのフォトルミネッセンスが大きく変化する上、発光性が変化した錯体を溶媒にさらすことで、容易にもとの発光状態へ戻すことが可能である。また、この現象のメカニズムについて考察を行い、以下のような結論を得た、こする前の状態は、青色発光を示す微結晶であり、これにすりつぶすという機械的刺激を加えることにより、アモルファス状態へと変化する。青色発光を示す微結晶では、π-πスタッキングによる分子間相互作用が支配的であるが、アモルファス状態では、おそらく、金原子間同士の弱い結合が形成され、これを介した分子間相互作用が支配的になると考えられる。溶媒を加えると再結晶がおこり、熱力学的に安定なもとの青色発光を示す状態に戻る。この現象は、配位子に含まれるフッ素原子の小さい分子間力により、分子同士のずれが起こりやすくなり、機械的刺激による固体相の変化が誘起されやすくなっていることが一つの要因であると推測される。さらに加熱によって、発光性が変化する化合物の開発を行い、ある種の二核金イソシアニド錯体が、機械的刺激によって発光色を変化させた後、加熱することにより元の発光色に戻すことが可能であることを見つけた。分子の流動性を高める目的で、アルキル鎖を二つの金(I)-イソシアニド部位に組み込んだ錯体を合成し、加熱に対する発光挙動の変化を調べた。この錯体の粉末を塗布したろ紙は、紫外線照射下で、機械的刺激による発光色の変化による情報の「書き込み」に加えて、加熱による情報の消去が可能である。
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