有機合成における合成中間体としてケイ素上に酸素官能基を有する芳香族ケイ素化合物が注目されており、今回、その合成について検討を行った。ケイ素上に酸素官能基としてシロキシ基を2つ有するヘプタメチルトリシロキサンを用いた芳香族ハロゲン化物のシリル化を検討したところ、ロジウム触媒を用いることによって、対応する芳香族ケイ素化合物を収率よく与えることを見出した。本触媒系の基質適用範囲は非常に広く、電子供与基、電子吸引基いずれを有する基質も利用できることを明らかにした。また、従来適切な合成法がなかったオルト位に置換基を有する基質に対しても高収率で目的の芳香族ケイ素化合物が得られた。 また、金属に配位可能な部位を持つ芳香族化合物の脱水素を伴う直接シリル化においても、ヘプタメチルトリシロキサンの利用を図った。芳香族アミドを基質にした場合、調製容易な0価ルテニウム錯体が高い触媒活性を示し、アルケンなどの水素補足剤の添加を必要とせず、対応する芳香族ケイ素化合物を収率よく与えることを見出した。カルボニル基をオルト配向基として用いた反応は、これまでヘテロ芳香環の例に限られていたが、本条件ではベンゼン環の炭素-水素結合を効率よくシリル化できる。 さらに、脱水素シリル化反応の触媒サイクルに対してDFT計算による詳細な検討を行い、従来提唱されている機構とは異なる経路で進行することを明らかにした。すなわち、高原子価のルテニウム(IV)を経由する機構よりもシグマ結合メタセシス機構がエネルギー的に有利に進行する。
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