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遷移金属多核錯体は、多様な電子状態をもつ金属イオンが電子的・磁気的相互作用を介して相乗的に機能する為、興味深い物性を示す。本研究では、異なる金属イオンをもつシアン化物イオン架橋多核錯体分子を合成し、金属イオン間の相乗的物性を自在に引き出すことで多重安定性の創出と物性の多段階制御を行うことを目的とした。その結果、鉄イオンとコバルトイオンからなる環状4核錯体[Fe^<III>_2Co^<II>_2 (CN)_6 (L1)_2 (L2)_4](L1 : 三座配位子、L2 : 二座配位子)が熱誘起分子内電子移動を示し、高温相([Fe^<III>_<LS> (S=1/2) Co^<II>_<Hs> (S=3/2)])と低温相([Fe^<II>_<LS> (S=0) Co^<III>_<LS>(S=0)])を可逆にとり得ることを明らかにした。さらに、多座配位子の電子的効果(電子供与性、求引性)によって、鉄イオンとコバルトイオンの酸化還元電位を変化させることで、高温相と低温相のエネルギー差をコントロールすることが可能なことを見出した。その結果、高温相のみを示す錯体、低温相のみを示す錯体、および熱誘起分子内電子移動を示す錯体を選択的に合成することに成功した。さらに、得られた四核錯体は低温における光照射により光誘起分子内電子移動を示し、安定な準安定状態を生成することを明らかにした。
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