最近までに申請者は二つの前周期ボリル金属錯体の合成に成功している。ボリルリチウムとTi(OiPr)4を混合することによってボリルチタン錯体を得ることに成功した。ホウ素-チタン原子間距離は2.258(2)Aであり、それぞれの原子の共有結合半径の和よりも大きくなっていることから、これまでのボリルアニオン等価体におけるボリルリチウムやボリルマグネシウムと傾向が似ていることがわかった。これはホウ素-チタン結合が大きく分極しているためであると考えており、現在計算化学的アプローチによる結合の性質の解明を検討中である。またチタン-酸素原子間距離は平均で1.758Aと短く、これらの原子間でのpπ-dπ相互作用の存在を示唆している。また、ボリルリチウムとCp^*HfCl3の反応を行った後、そのままPhCH2Kと反応させることで、アルキル置換4族ボリルハフニウム錯体を得ることにも成功した。X線結晶構造解析によるとホウ素-ハフニウム原子間距離は2.497(4)Aであり、ボリルチタン錯体と同様に共有結合半径の和よりも長くなっていたが、ハフニウム周りの結合角およびハフニウム-炭素原子間距離は対応するCp^*Hf(CH2Ph)3錯体と同様であり、ホウ素配位子の立体障害はハフニウム原子周りの構造に対して大きな影響を与えていないことも明らかになった。これらの4族金属ボリル錯体のうち、ボリルハフニウム錯体をPh3CB(C6F5)4と共に用いると、エチレンや1-ヘキセンの重合反応が進行することもわかった。
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