研究概要 |
最近までに申請者はボリルチタン錯体およびボリルハフニウム錯体の合成に成功していた。本年度はDFT計算を行うことで、得られた前周期ボリル金属錯体のホウ素-金属結合の性質を明らかにした。置換基を簡略化したモデル化合物を用いて、B3LYP//LANL2DZ(f)/cc-pvdzにより構造最適化を行うことで、X線結晶構造解析によって得られた構造と同様の構造が得られた。TiおよびHf錯体それぞれにおいて、HOMOはボリル配位子の5員環の・軌道に対応しており、HOMO-1はホウ素-金属結合に対応していた。また、NBO解析によってホウ素-金属結合の共有結合性が明らかとなり、これまでに我々が合成したボリルアニオン類とは本質的に異なる結合を有することがわかった。 こりらの4族金属ボリル錯体のうち、ボリルハフニウム錯体をPh3CB(C6F5)4と共に用にると、エチレンや1-ヘキセンの重合反応が進行することもわかった。エチレンの重合反応では、反応温度80℃、エチレン圧0.8MPaにおいて最も高い重合活性(110[kgPE/molHfh])を示し、室温下エチレン圧2.5MPaにおいては分子量66,000のポリエチレンを得た。この活性は類似のCp*Hf型の重合触媒と同等である。得られたポリエチレンは、13C NMRを用いた解析により分岐の少ない直線的な構造であることがわかった。1-ヘキセンの重合反応では、室温下で類似のCp*Hf型の触媒と比較してやや高活性を示した(21[kgPHEX/molHfh])。得られたポリヘキセンは、13C NMRにおける5連子の解析によりアタクチックポリマーであることがわかった。 これらの研究成果はいずれも、これまでに存在し得なかった4族ボリル金属錯体の構造や性質に対して重要な知見を与える。
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