研究概要 |
前年度、Pd4Si3型の平面四核錯体の合成と構造解析及びヨウ化銅の付加体である五核錯体の生成について成果を得た。この錯体の温度可変^1H NMRスペクトルから銅が平面上で結合を保ちながら旋回する、という運動をNMRタイムスケールでおこなっていることがわかった。一方、五核錯体の溶液を60℃以上に加熱するとヨウ化銅が解離し、平面型四核錯体が再生した。NMRによりこの反応を追跡すると副生成物のない定量的な反応であることがわかった。五核錯体からの熱的なヨウ化銅解離反応の速度を測定したところ、反応は錯体に一次であるが、低温では誘導期を有することがわかった。反応の活性化パラメーターはΔH^≠=99.6kJmol^<-1>,ΔG^≠=109.0kJmol^<-1>, ΔS^≠=-31.5Jmol^<-1>deg^<-1>であり、活性化エントロピーが負の値をもつことから、単純な解離反応ではなく、何らかの中間体を経由する反応であると理解される。ジフェニルゲルミレン配位子を有する四核錯体を合成する過程で、ゲルマパラダサイクルの生成をみいだし、その構造や反応性を明らかにした。ビスゲルミルパラジウム錯体に過剰のジフェニルゲルマンを添加して加熱すると二核環状錯体と単核ゲルマパラダシクロペンタンとが生成し、両者の生成は反応の条件によって制御することができた(式2)。ジフェニルゲルマンの脱水素縮合反応が環状中間体を経由する可能性を示すもので興味深い。今後、四核錯体とあわせて研究を進める予定である
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