研究概要 |
テトラフェニルポルフィリン錯体の1つのフェニル基のオルト位にアミド基を導入したアミドポルフィリン(amtpp)を配位子に有するコバルト(II)ポルフィリン錯体[Co(amtpp)]が酸素分子を活性化してポルフィリン環を酸化的に開裂させることを見出した。この反応では、アミド基がオキソインドール環に変換され、その結果、ペンタピロール型配位子がコバルト中心を取り囲んだヘリカルなコバルト(III)錯体を生成することを見出した。この変換反応では、1-MeImの添加に伴い、コバルト上で酸素分子が活性化され、ポルフィリンの酸化的な開裂を引き起こしていることが示唆された。生成物は右巻きと左巻きのラセミ体として分離されるが、それらの絶対構造は単結晶構造解析により明らかにすることができた。さらに、キラルな軸配位子としてコチニンを添加しこの酸化反応を行った場合、左巻き型のCo-lpp錯体がおよそ12%程度、優先的に誘導されることがわかった。 また、屈曲性のある架橋配位子を利用したフレキシブルな多核錯体、あるいは配位高分子を合成し、その温度変化、あるいはゲスト分子の放出と再吸着による構造変化について検討を進めた。4,4'-ジピリジルスルフィド(dps)を架橋配位子に用いて外部刺激に応答して一次元型配位高分子と、外部刺激に応答して変化する一連の配列構造の変化を明らかにした。[Ni(dps)_2(NO_3)_2]・G(G=ゲスト分子)で表される一連の配位高分子を合成し、ゲスト分子に依存した結晶構造、温度変化に応答して変化するチャンネル構造とその構造変化メカニズム、さらには、ゲスト分子の放出と再吸着に伴って起こる構造変化について検討を進めた。特に、メタノールとアセトンは細孔構造を誘起できなかったが、これらを1:1で混合した溶媒を反応に用いると、温度変化に応答して変化するチャンネル構造を有する配位高分子が得られることを見いだした。
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