チオカルバモイル基[C(=S)NR_2]を有するアルキンに対して、8~10族のルテニウム、ロジウムおよび白金触媒を作用させると、15および16族元素による共鳴効果により、環化が容易に起こり新たに(2-チエニル)カルベン錯体が発生する。フランやチオフェンの共存下、本反応を行うと、親電子的な(2-チエニル)カルベン中間体がフランやチオフェンの開環反応を引起こし、チォフェンの置換した共役ジエンを良好な収率で与えた。フラン、チオフェンの2位にはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基の他、アリール基等様々な置換基を導入したものを使用することができる。チオカルバモイル基の高い求核性により環化反応が促進されている。この効果を利用して、異種複素環ダイマーの合成を試みた。複素環開環反応に用いたチオカルバモイル基を有するアルキンと2-プロモ-1-シクロヘキセンカルボアルデヒドの薗頭反応を行ったところ、カップリング反応の生成物ではなく、それの二重環化反応(環化異性化反応)が一気に進行したチエニルフランを良い収率で与えた。オカルバモイル基の高い求核性と薗頭反応に使用した銅触媒によりタンデム反応が進行したと考えられる。さらに、第一級アミンの存在下、薗頭反応を実施すると、アルデヒド基が同時にイミノ化をされることにより、対応するチエニルピロールを良好な収率で得ることができた。 カップリング反応・二重環化反応のタンデム反応により得られる異種複素環ダイマーは、遷移金属触媒によるC-H結合の直接的アリール化反応を用いることにより、混合型複素環オリゴマー合成に利用できることも明らかにした。
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