ロジウム触媒存在下、芳香族ニトリル類とジシランを反応させると炭素-シアノ基が切断し、シリル化反応が進行することを見いだした。官能基を有する種々の芳香族炭素-シアノ結合に対して有効であり、高い官能基許容性を示す。さらに、種々のアルケニルニトリルを用いて検討したところ、trans-ケイ皮ニトリルを用いたところ、73%の単離収率で対応するシリル化体が得られた。一方、cis体を出発物質として反応させると、反応条件化で異性化が進行し、得られた生成物はすべてtrans体であった。アルキル置換のビニルニトリルでは、原料は消失するものの、対応する生成物は全く得られなかった。基質の熱的安定性が原因ではないかと考え、より熱的に安定であると考えられるビニル部位が三置換のニトリル誘導体を反応させたところ、期待通り対応するシリル化体が得られた。不飽和ニトリルのβ位が二置換の誘導体も本反応に適用可能である。このシリル化反応は、アリルシアニドやベンジルシアニドへも展開することが可能であることがわかった。 本反応は、鍵過程として、炭素-シアノ結合を切断しシアノ基をロジウム種に変換する素過程を含んでいる。そこで、発生した芳香族ロジウム錯体を合成化学的に利用することを目的にクロスカップリング反応を検討した。その結果、分子内に芳香族ハロゲン化物を有する芳香族ニトリルを反応させると、クロスカップリングが効率的に進行し、三環性の芳香族化合物の合成に成功した。
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