研究概要 |
ポリラジカルのスピン多重度の制御とその機能に及ぼす元素相乗効果を解明するため, 以下のとおり実施した。 1. ポリラジカルとしてテトララジカルについて, そのスピン多重度の制御を検討した。テトララジカルには3つのスピン多重度, 一重項(S), 三重項(T), 五重項(Q)があり, 三重項には2種類のスピン配列(T-1, T-2)と一重項には3種類のスピン配列(S-1, S-2, S-3)パターンが存在可能である。そのため, それぞれのスピン配列はテトララジカル分子の構造と反応性に大きく影響を及ぼすと予想される。そこで, 2種の置換基を有するシクロペンタンから構成するテトララジカル分子に関して, 量子化学計算を行い, 最安定スピン配列における置換基の効果を調べた。 2. 理論的予測の実験的検証として, 長寿命のテトララジカル分子の構築を検討した。これまでに見出した長寿命一重項ビラジカルに関する知見を適用し, 分子設計および合成を行った。これまでに, シクロペンタン-1, 3-ビラジカルの最安定スピン多重度が2位の置換基により制御できることから, 数種の置換基を有するテトララジカル前駆化合物の合成を行い, テトララジカルのスピン整列を試みた。現在, 合成した化合物から生成したテトララジカルの最安定スピン配列と反応性に及ぼす置換基の効果について, 量子化学計算と吸収スペクトルならびにESRを用いた分光学的手法を用いて調査している。
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