研究課題
本研究ではシリル遷移金属錯体を鍵化合物として、シアナミド(R_2N-CN)のN-CN結合を切断する反応について検討を行った。その結果、鉄シリル錯体を用いて室温で光照射を行うと、シアナミドのN-CN結合が切断できることを見出した。しかしこの反応は化学量論反応であった。また、モリブデンメチル錯体を用いても、ヒドロシランとシアナミドを反応させると、N-CN結合が切断されることが分かった。さらにこの場合はモリブデン錯体か触媒として働くことも明らかにした。シアナミドのN-CN結合は単結合というよりはむしろ二重結合的性格か強く、一般には切断が困難であることが知られている。このシアナミドのN-CN結合を温和な条件で切断したのは本研究が最初である。反応機構を明らかにする目的で反応中間体の単離を試みた。その結果N-シリルーη^2-アミジノ鉄錯体の単離に成功し、そのX線解析により構造を明らかにした。単離したこの錯体を溶媒中で加熱することによりN-CN結合切断生成物か得られた。これより、この錯体が反応中間体であることが分かった。これらの結果より、鉄シリル16電子錯体にシアナミドのCN三重結合部位がη^2配位し、鉄上のシリル基がニトリル窒素に転位してN-シリル-η^2-アミジノ鉄錯体が生成し、その後この配位子が鉄配位圏内でスライドしてN-CN結合が解裂するという機構を提案した。
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