本研究は、光触媒を用いた環境浄化反応における可視光の効率的利用を実現する新たな概念として、"高分散金属微粒子による伝導帯アシスト型可視光応答性光触媒"を提案し、従来の可視光応答性光触媒の性能を凌駕する次世代型光触媒の開発を目的とする。実用化がすでに進められている酸化チタンは優れた光触媒であるが、吸収できる光は紫外線に限られ、屋内のように紫外線強度の低い環境では効果が小さい。これに対して、酸化タングステンは、可視光吸収を有するが、有機物の分解活性は低いとこれまで考えられてきた。しかし我々は、酸化タングステンの表面に適切な手法によって白金微粒子を高分散に担持させると、極めて高効率に有機物の完全分解が進行することを見出した。今年度は、この反応メカニズムの解明、特に励起電子による酸素還元反応の追跡を中心に研究を進めた。 白金以外の各種貴金属を酸化タングステンに担持させて、これらの光触媒活性を調べると共に、光音響分光法を用いて励起電子の反応性を検討した。その結果、白金やパラジウムを担持させた場合には、励起電子と酸素分子の反応速度が顕著に向上し、その結果として正孔による有機物の分解速度が向上することを見出した。また、酸素の還元種の定性・定量を試みた結果、酸化タングステン光触媒では、励起電子の2電子還元によって酸素から過酸化水素が主に生成していることを見出した。この知見を元に、爺視光を用いて酸素から過酸化水素を定常的に生成できる、新規なコアシェル型光触媒を開発した。
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