2年間の研究期間の初年度の研究目標として、これまでに精力的に研究を展開してきたジアミノホスフィンオキシド配位子(DIAPHOX)の有用性の拡大を設定し研究を開始した。まず、軸不斉アレン類の触媒的不斉含成に成功した。Pd-DIAPHOX触媒系によるアリル位置換反応を用いることにより、最高で99%eeの光学純度にて目的物を得た。本触媒系にて高い選択性を得るためには酢酸リチウムの添加が必須である。詳細な反応メカニズム解析を行った結果、添加剤の酢酸リチウムには動的速度論分割を効率的に進行させるために必要な2つのπ-アリルパラジウム間の平衡を促進させる効果がある事を見出した。以上の点から、本触媒反応系はPd-Liの協奏機能により実現したものと言える。また、新規反応系の開拓研究としてフリーデルクラフツ型アリル位置換反応を用いるスピロシクロヘキサジエノン類の合成を検討し、高収率で目的物を得る反応条件の確立に成功した。ジアミノホスフンオキシドを用いた場合には選択性の誘起はみられなかったが、種々の不斉配位子を用いて検討を行った結果、80%ee程度の選択性を得るまで至っている。一方、多金属型触媒の創成を志向した検討としては、2級ホスフィンオキシド骨格を基盤とする新規配位子のデザイン、合成を計画した。現在までに、ジフェニルホスフィノイル基、ピリジル基を近傍に持つ2座配位子の合成に成功しており、Pd触媒を用いるアリル位置換反応、Ir触媒を用いる不斉還元において中程度の選択性にて目的物を得ることに成功している。
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