水を溶媒とする有機合成反応は、環境に負荷をかけない有機合成プロセスの開拓において重要な研究課題の一つである。近年、水を溶媒として積極的に活用する試みが様々な反応においてなされているが、有機物の水への溶解性等の問題から従来の合成反応の手法をそのまま水中へ展開することは通常難しい。筆者らは、最近シリカゲル固定化触媒とイオン液体を組み合わせることにより、水中で有効に機能する新たな反応場を見いだしている。そこで、本研究ではイオン液体を反応場として活用する水溶媒中での効率的反応系の構築を目指す検討を行った。 触媒を固定化したフローリアクターを用いる合成反応は、反応液からの触媒の分離等の後処理操作を必要とせず、かつ連続した反応の実行が可能であるため、固体担持型触媒を最大限に活用する優れた手法であるといえる。そこで、フローリアクターに担持された触媒とイオン液体による反応場を活用することによる新たな反応システムの開発を目指した。しかし、これまでの検討では、リアクター内壁に固定化された各種金属触媒が条件によっては壁からはく離してしまうため、さらなるリアクターの改良が必要であった。これは特に塩基性条件によって、ガラス表面と修飾剤との比較的弱い化学結合が加水分解されてしまうことが原因と考えられた。そこで、この問題を克服し、フローリアクターの汎用性を上げるべく金属触媒の新たな固定化法の開発を行った。より強固な触媒の担持法を探索したところ、ポリシロキサンが内壁に塗布されたGCキャピラリーを用いた方法が有効であることがわかった。これを用いることにより反応に十分な強度を持つキャピラリーを作成することができ、アルコールの酸素酸化反応が効率的に進行することを明らかにした。本検討により、フローリアクターシステム中での反応場構築に向けた新たな手法を開発することができた。
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