研究課題
シクロメタル化イリジウム錯体は光照射において、従来のルテニウム錯体より還元力の強い励起状態を生成し、ビオローゲン誘導体などの電子受容体と光電子移動反応を起こす。ゼオライトのナノ空間を利用し、錯体と電子受容体の分子間距離や幾何学的配置などを制御することで、光電子移動反応で生成した電荷分離状態を促進することが可能である。本研究は、代表的なトリスオルトメタル化イリジウム錯体Ir(ppy)_3をX型ゼオライトの細孔内に閉じ込め、電子受容体との間に距離を置くことにより、電荷分離させることを試みる。Ir(ppy)_3とビオローゲン誘導体との光電子移動反応が酸化的機構で進行し、さらにIr(ppy)_3-Xの発光強度はゼオライト細孔内で共存するメチルビオローゲン(MV^<2+>)の濃度の増大につれて減少していくことは消光実験の結果からわかった。トリエタノールアミン存在下で、Ir(ppy)_3-XをMV^<2+>水溶液に分散し、390nm以上の光を照射すると、溶液の吸収スペクトルに390nmと606nmのMVラジカルカチオンに由来するピークが観測できた。MV^<2+>の代わりに、ゼオライト中に拡散しにくいビオローゲン誘導体PVS(propyl viologen sulfonate)を用いる場合、溶液中にPVSラジカルイオンが生成した。この結果から、ゼオライト中のIr(ppy)_3から溶液中のPVSへ電子が移動し、光電子移動反応が起こったと言える。この反応は生成したPVSラジカルイオンがゼオライト骨格のマイナス電荷との反発により促進されたと考えられる。
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