| 研究概要 |
生体系にはトルエンやメタンを水酸化する二核鉄酸素活性化酵素がある。これらでは反応中間体として二核鉄(III)ペルオキソ種が観測されている。最近トルエンを水酸化するtoluene/xylenemonooxygenase(TMO)で, ペルオキソ中間体が反応活性種であると報告された。先に我々は, 配位子に酸化反応プローブとなるフェニル基を組み込んだ二核化配位子の二核鉄ペルオキソ錯体で, フェニル基のほぼ定量的な水酸化反応に成功しTMOの良好なモデル反応に成功している。本研究では, さらに酸化反応プローブとしてフェニル基とメチル基の両方を組み込んだハイブリット配位子及びメチル基のみを組み込んだ新規二核化配位子を設計開発し, それら二核鉄(II)錯体の酸素分子との反応性及び生成した二核鉄(III)ペルオキソ錯体のフェニル基及びメチル基に対する酸化反応性を調べた。その結果, 下記のことが明らかとなった。
いずれの配位子を含む錯体でも酸素分子との反応でペルオキソ錯体が生成することが明らかとなった。興味深いことに, 二つの鉄イオンを架橋する架橋カルボン酸イオンが安息香酸イオンでは, 酸素分子は可逆的に結合することが明らかとなった。一方, トリフェニル酢酸イオンの架橋錯体では, フェニル基とメチル基のハイブリット及びメチル基のみを有するいずれの配位子でもメチル基の選択的水酸化反応が起こることが明らかとなり, ペルオキソ基は脂肪族C-H結合をも酸化することが明らかとなった。さらに, 外部基質であるTHFをも水酸化することが明らかとなり, 今後様々な外部基質の酸化反応を調べることが可能となった。
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