研究概要 |
本研究初年度には、イオン対協奏型のオニウム塩触媒作用創出の端緒としてアミノホスホニウムカルボキシラートを創製し、アニオンのpK_aを考慮したモデル反応としてアズラクトンとN-スルホニルイミンとの直截的マンニッヒ反応を取り上げた。まず、(M, S)-体のホルマート存在下、フェニルアラニンから誘導したアズラクトンとN-トシルイミンを-40℃で反応させたところ、目的とする付加体を定量的に得た。ここで、対アニオンの構造変換による反応性の違いを評価するために、アセタート及びピバラートを有するホスホニウム塩を用いたところ、その構造と反応性の間に明確な相関が見られ、塩基性が増すとともに反応性が著しく向上した。これは、対アニオンが脱プロトン化と再プロトン化の両方に関与していることを強く示唆する結果である。また、エナンチオ選択性はカチオン側のスピロキラリティーの影響を強く受け、(M, S)-体がほとんどエナンチオ選択性を示さなかったのに対し、(P, S)-体の適用により中程度まで向上した。この理由は、両者の三次元構造の違いから説明できる。さらに、基質の保護基の構造と反応温度を最適化することで、高い立体選択性の獲得に成功した。続いて、イミンの適応範囲を調べたところ、直鎖アルキル基を有するものでは一様に高いエナンチオ選択性が得られた。また、末端オレフィンやエーテル結合、ベンゾイル基を有する場合も、95%eeを超えるエナンチオ選択性を示した。分枝アルキルイミンを用いたところ、β-置換体は直鎖状イミンと同様の反応性であったものの、α位に置換基を持ち、立体的に嵩高いイミンについては、反応時間がやや長くなった。一方、ロイシンあるいはセリンから誘導されるアズラクトンを用いても同様に反応が進行し、高立体選択的に生成物が得られることを確かめている。なお、生成物は酸処理により脱保護することが可能であり、収率良くα, B-ジアミノ酸に導くことができる。
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