触媒的有機合成反応の効率は「反応性」、「選択性」、「生産性」に加えて「操作性」によって評価される。四番目の項目は軽視される傾向にあるが、高極性な生体関連物質の合成においては重要な課題となる。とくに高い原子効率や低いEファクタの触媒反応においては、最終生成物からの触媒の分離効率の全効率に与える影響度は大きい。 本研究者は、この状況を鑑み、日立マクスウェル社の協力を得、「高分散性・低保磁力・高飽和磁化率」を特徴とする球形マイクロFe_3O_4@SiO_2粒子を調製し、この粒子に当研究室で開発されたアリルオキシ結合活性化触媒CpRu(IV)(η^3-C_3H_5)(2-ピリジンカルボキシラト)錯体を固定化した新型の不均一系触媒の開発した。通常の磁石を用いるだけで、迅速に触媒を分離し、凝集することなく容易に再分散させることができる。繰り返し利用できるので経済効率の観点からも注目される。分配による単離が容易でないオリゴリボヌクレオチド類やペプチド類の最終脱保護に有効であり、極微量のスケールでも、簡単な操作で定量的に目的物を単離することができることを示した。本触媒は、「無添加・メタノール溶媒」で様々なアリルオキシ化合物からアリル基を除去することができる。共生成物は低沸点アリルメチルエーテルだけなので、濃縮のみで目的物を得ることができる利点を有するが、残る唯一の問題は「生成物からの触媒分離」にあった。本不均一系触媒の開発によって、「触媒添加・振盪・磁気分離・濃縮」という簡単な操作で目的生成物を得ることができるようになった。「保護基の化学」への貢献度も高い。
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