ロジウム触媒を用いた末端アルキンに対するアリールボロン酸の付加反応は、しばしば複雑な混合物を与える。そこで本研究では、エチニルオキシランとフェニルボロン酸からα-アレノールを合成する反応について反応条件について詳細に検討した。その結果、[Rh(OH)(cod)]2を触媒として用い、エチニルオキシランに対して1.1当量のフェニルボロン酸を0℃で作用させると、対応するα-アレノールがシン選択的に好収率で生成することがわかった。鎖状のアルキニルオキシランの場合、トランス体のオキシランの方がシス体よりも高いジアステレオ選択性を示した。この傾向は内部アルキンをもつアルキニルオキシランでも見られた。シン体のα-アレノールが立体選択的に得られることは、アリールロジウム種がアルキン部位に付加して生成するアルケニルロジウム種において、オキシラン環の酸素がロジウムに強く配位して、シン選択的なβ-酸素脱離を誘導するためであると説明できる。トランス体の場合、より大きな立体障害のためにこの配位効果が弱められ、シス選択性が低下したものと解釈できる。次にテトラヒドロフラン骨格の2位と5位に不斉中心を有するセキステルペンであるBoivinianin Bを標的化合物として選び、ロジウム触媒を用いたα-アレノールの立体選択的合成法を応用してその全合成を試みた。その結果、2-ブチン-1-オールから出発して7段階を経て立体選択的に(±)-Boivinianin Bを合成することに初めて成功した。
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