研究概要 |
アレン化合物は、軸性キラリティーなど興味深い特徴をもつ化合物群であり、有機合成化学の重要なビルディングブロックである。本研究の目的は、ロジウム触媒のβ-酸素脱離を鍵過程とする、置換アレンの立体選択的合成法を開発することである。我々は昨年度の研究により、ロジウム錯体存在下でアルキニルオキシランに有機ボロン酸を作用させてシン体のα-アレノールをジアステレオ選択的に得る反応において、これまで困難であった末端アルキンを有するアルキニルオキシランでも良好な収率でα-アレノールを得る反応条件を見出した。また、これらの知見を基盤にして、マダガスカル産センダン科植物(Cipadessa boiviniana)の樹皮から単離されたBoivinianin Bの全合成を達成した。また、この研究の過程で、生じたα-アレノールに対してアリールボロン酸が立体選択的に付加することを見いだした。そこで本年度は、この反応について詳細に検討を行った。その結果、触媒量の[Rh(OH)(cod)]2の存在下で、α-アレノールとして4-フェニルブタ-2,3-ジエン-1-オールを用い、小過剰のo-トリルボロン酸を作用させると、収率71%で(Z)-1-フェニル-2-トリルブタ-1,3-ジエン(スチルベン誘導体)が立体選択的に得られることを見出した(E/Z=<5/95)。パラジウム触媒を用いた同様のカップリング反応では(E)体が優先的に得られるのに対して、本反応は(Z)体が選択的に得られることを特微とする。また本反応は、様々なアリールボロン酸に適用可能であった。ついで、反応の基質一般性ついて検討したところ、(Z)体選択的に反応が進行するためには、α-アレノールの末端にアリール基が置換していることが必要であることがわかった。
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