研究概要 |
複数のアリール基を有する単環および縮環芳香族化合物は、近年、有機発光材料や半導体材料として有用であり、近年活発にそれらの合成研究がなされている。本研究代表者らは、これまでに適当な官能基をもつ芳香族基質と過剰量の芳香族ハロゲン化物やジアリールアセチレンとの錯体触媒反応で芳香環のマルチアリール化物が得られことを見出している。そこで本研究では、マルチアリール化反応のさらなる展開を行うことを目的としている。本年度の研究では、昨年度の成果を踏まえ芳香族複素環化合物の反応を中心に検討した。まず、1-メチルインドール-3-カルボン酸類とジアリールアセチレンとの反応では、パラジウム触媒存在下、炭素-水素結合切断および脱炭酸を伴って1:2カップリングが効率よく進行し、テトラアリールカルバゾール類が収率よく得られることがわかった。また、1-フェニルインドール-3-カルボン酸を出発原料として用いると、1位フェニル基のオルト位とインドール環の2位で縮環がおこり、1:1カップリング体が主生成物として得られることを見出した。興味深いことに、この反応の生成物は強い固体蛍光を示すことも明らかとなった。一方、桂皮酸類からワンポットで容易に得られる3-クロロベンゾチオフェン-2-カルボン酸エステルの炭素-塩素結合活性化および脱炭酸を伴うクロスカップリングによる、様々な2,3-ジアリールベンゾチオフェンの新規合成法の開発にも成功した。すなわち、ニッケル触媒を用いたアリールホウ素反応剤による3位アリール化を行い、続く加水分解とパラジウム触媒を用いた脱炭酸アリール-アリールクロスカップリングによって2,3-ジアリールベンゾチオフェンが良好な収率で得られた。また、この手法は電子豊富有機材料としての2,3,6,7-テトラアリールベンゾジチオフェン類の合成にも適用可能であった。また、関連するトリおよびテトラアリールナフタレン類の新規合成も行った。
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