研究概要 |
触媒量のコバルト錯体の存在下, オレフィンに対して2-プロパノールなどの第2級アルコールが還元剤として,分子状酸素が酸化剤として協奏的に作用する結果,対応する水和生成物が得られる。2-プロパノールの代わりにシラン類を用いる場合にも完全にマルコフニコフ則に従った酸素官能基化反応が進行する。また, マンガン錯体の共存条件では,シラン類の存在下α, β-不飽和カルボン酸誘導体に対し同様の反応が進行し, 対応するα-ヒドロキシカルボン酸誘導体が得られる。一方, 分子状酸素に代えて, 一酸化窒素ないし亜硝酸エステルを作用させると窒素官能基化反応が位置選択的に進行し, 対応するニトロソ誘導体またはオキシムが得られる。これらの反応の詳細な機構は明らかではないが, 第2級アルコールまたはシランによりコバルト-ヒドリド中間体が生成し, 炭素-炭素二重結合に付加, 対応するアルキルーコバルト中間体に対し, 分子状酸素や一酸化窒素などが求電子的に挿入する反応を想定することができる。まず, モデル反応として亜硝酸エステルを窒素源とするオレフィンのニトロソ化反応の検討を行った。この反応もマルコフニコフ則に従う位置異性体を与えるがニトロソ体はオキシム体に容易に異性化するため, モデル化合物にはエキソオレフィンを用いて, 第3級窒素官能基化反応を試みた。錯体触媒の中心金属について検討したところ, 鉄(II)ないし鉄(III)錯体またはコバルト(II)錯体を触媒としたところ, オレフィンの転化率が向上し・対応するニトロソ体が得られることがわかった。また, 鉄(II)salen錯体やケトイミナトコバルト(II)錯体を触媒とした場合にも対応するニトロソ体が良好な収率で得られることがわかった。赤外吸収スペクトルおよびNMR分析により, 得られたニトロソ体は単量体として存在することが確認された。
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