研究概要 |
SrTiO_3光触媒の合成法を検討したところ, ソフトプロセスの一つである錯体重合法で合成した場合に最も高い窒素生成活性を示した. そこで, 錯体重合法で合成したSrTiO_3光触媒による硝酸イオンの還元反応についての条件検討を行った. その際, ホウ酸を緩衝剤として加え, 反応溶液のpHを中性に制御した. また, 石英製内部照射型反応管を用いて300nm以下の光照射を行った. 種々の助触媒の担持効果を調べた結果, 助触媒未担持では, 主に亜硝酸イオンが生成し, 窒素への転化率は低かったのに対し, Ni, Rh, およびPt助触媒を担持することで, 窒素への転化が促進されることがわかった. 助触媒の担持法についても検討したところ, 光電着法より含浸法の方が硝酸イオンの窒素への転化率(窒素生成量×2/初期硝酸イオン量)が高くなることがわかった. Ni助触媒を含浸担持した場合にもっとも硝酸イオンの還元反応が促進され, 硝酸イオンの窒素への転化率が53%と高い値が得られた. 反応10時間後における主な還元生成物は窒素であり, その他に亜硝酸イオンも得られた. 反応前後におけるマスバランスはほぼ1であり, 他の生成物がないことを確認した. このようにSrTiO_3光触媒を用いて, 特別な還元剤を用いずに窒素への高い転化率を得ることができた. 一方, Pyrex反応管を用いて300nm以下の光をカットし, 光化学反応の寄与の少ない条件下での硝酸イオンの還元反応を検討した結果, 反応10時間後の生成物として微量のアンモニウムイオンが得られ, 窒素は生成しなかった. このように, 照射波長により, 効率のみならず, 反応生成物の選択性も異なることが明らかとなった。
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