研究課題
本研究は、時間依存密度汎関数法(TDDFT)に多配置波動関数を取り込むことにより、これまでのTDDFTでは再現できない電子励起状態ポテンシャル曲面の交差付近の再現を可能にし、大規模分子の光化学反応のon the flyシミュレーションを可能にすることを目的とした。その結果、第二歩として、多配置DFTを開発し、多配置TDDFTの定式を与えることができた。多配置DFTの開発において問題になるのが、電子相関のダブルカウンティングの問題である。本研究では特定の電子励起配置のみ取り込むことにより、初めてこの問題を回避した多配置DFTを開発することに成功した。本年度は、この多配置DFTを双極子モーメント計算に適用し、単配置DFTからの改善を確認した。しかし、この多配置DFTで電子基底状態のポテンシャル曲面を計算したところ、解離極限を著しく過大評価するという問題が見出された。この問題を解決するため、2電子占有軌道の全ての組み合わせを考慮した多配置DFT計算プログラムを開発し、ポテンシャル計算を行なったが、問題の解決には至らなかった。原因はSCFプロセスの欠如にあると考えられる。現在、SCFを取り込んだ多配置DFTのプログラムを開発中である。また、本年度は、これまでのDFTでは再現できなかった内殻電子励起の問題にも取り組んだ。その結果、「修正領域自己相互作用補正(mRSIC)法」と「擬スペクトルRSIC(PSRSIC)法」を開発し、内殻電子励起スペクトルの再現性を大きく改善することに成功した。さらに、固体の問題にも取り組み、長距離交換相互作用は固体系で効かず、これが固体電子のnearsightednessの原因であること、および長距離補正(LC)法ではバンドギャップを過大評価するという既存の固体バンド計算法の問題の原因を解明することができた。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
Bulletin of Chemical Society of Japan 82
ページ: 1367-1371
Geochimica et Cosmochimica Acta 73
ページ: 5975-5988
Journal of Computational Chemistry 30
ページ: 2583-2593
Journal of Physical Chemistry A (In press)
Organic Letters (In press)
Journal of Chemical Physics (In press)