研究課題/領域番号 |
20038013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩澤 康裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40018015)
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研究分担者 |
佐々木 岳彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (90242099)
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キーワード | 密度汎関数法 / ゼオライト / レニウム / ベンゼン / 酸化 / フェノール / 遷移状態 / 反応機構 |
研究概要 |
本研究では、我々が開発した高活性、高選択性を示す触媒系について、その反応原理を解明するために、実在表面系に適応可能な分子理論を種々精査し、活性構造と反応原理の対応を見出し、クラスター触媒の理論的な開発指針の確立を目指している。我々はCH_3ReO_3前駆体錯体をZSM-5ゼオライト細孔内に固定化しNH_3処理して得られる新規窒素内包型Re_<10>クラスター触媒(Re_<10>/ZSM-5)が、分子状酸素によりベンゼンを直接フェノールに転換する選択酸化触媒作用に高い転化率(9.8%)と極めて高い選択性(94%)を示すことを見出した。これは、過去40年間誰も成功しなかった転化率5%かっ50%選択性の工業化の壁を越える初めての触媒である。Re_<10>クラスター/ZSM-5触媒の優れた触媒作用の原理・機構を見出すことは、クメン法に代わりうる新プロセス開発だけでなく、多くの化学プロセスで課題を抱える選択酸化触媒作用を制御する活性構造、電子状態及び素過程を明らかにする上で極めて重要である。DFT理論計算により酸素分子の活性化及びフェノール合成過程を調べ、酸素分子の解離を伴う反応機構を提案し、活性化因子、反応機構の詳細の解明を検討した。窒素原子を内包するRe_<10>核クラスターの活性構造を密度汎関数法により求めて、EXAFS解析の結果を再現することができた。更に、ベンゼン吸着、酸素分子吸着と解離、フェノール生成の反応機構を明らかにした。Re_<10>核クラスターが内包している窒素原子の存在により、金属的なRe-Re結合が保たれ、反応物であるベンゼンと酸素分子の吸着サイトとしての役割を果たし、有効な反応場として機能していることがわかった。
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