研究概要 |
X線構造解析により酸化型アズリン(Az)と還元型シトクロムc551(Cyt)の構造が知られている。各立体構造にプロトンを付加し、各活性部位付近の必要パラメータを各活性部位類似のクラスターモデルを用いて密度汎関数法(UB3LYP/6-31G^<**>/ESP)により見積もった。これらの立体構造を用いてAz_<ox>-Cyt_<red>複合体構造最適化をZDOCKプログラムパッケージおよび独自開発プログラムで予測した。これらの座標データから3つの複合体モデルを作成した。(1)水素結合を含む静電相互作用エネルギーを最小にしたモデル。(2)疎水性相互作用エネルギー最小にした構造。(3)活性部位の電荷分布をAz_<red>-Cyt_<ox>型にしたモデル。これら3通りのモデルよるタンパク質複合体の溶液内での安定性を溶媒和自由エネルギー計算に評価した。計算した構造エネルギーに溶媒和自由エネルギー,エントロピーを加えることで新しく定義したタンパク質の自由エネルギーの計算結果は活性部位の電荷分布をAz_<red>-Cyt_<ox>型にしたモデルが最も低い値を示した。 結合自由エネルギーの評価には、複合体を形成する前のAz_<ox>単体の構造とCyt_<red>単体の構造における溶媒和エネルギー,構造エネルギー,エントロピーを評価し、タンパク質複合体の自由エネルギーとの差から評価した。Az_<ox>, Cyt_<red>単体と複合体の自由エネルギーの差は-107kcal/mol、構造エネルギーの差は-47kcal/mol、エントロピーの差は31kcal/molとなった。これらの結果から結合自由エネルギーの値は-123kcal/molであることが示され、タンパク質複合体の結合自由エネルギーには溶媒和自由エネルギーが大きく寄与していることがこれらの計算結果から示された。
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