研究概要 |
本年度においては次のプロジェクトを遂行した。 (1) ヘテロ原子を含んだエン反応における協奏および段階経路の選択制 エン反応のモデル反応はプロペンとエチレンであるがエチレンの一つの炭素原子をN, O, Si, P, Sに置き換えることのより反応機構の本質を明らかにすることを目的として理論的解析を行なった。この結果、協奏反応が有利に進行する系では新しいC-X結合の生成と水素転位がほぼ同時に起るのに対して、段階反応が有利に進行する系ではC-X結合の生成に比べ,水素転位か遅れて始まることをCiLC解析の結果から明らかにした。 (2) Myers-Saito環化反応に関する理論的研究 Enyne Alleneから五員環および六員環形成の反応機構およびエネルギー変化について調べた。この結果、五員環および六員環形成の反応は相互作用する軌道が異なり求めたポテンシャル局面から今までの実験結果が非常に良く説明することができた。 (3) Diels-Alder反応の置換基効果と位置選択性に関なる理論的研究 Diels-Alder反応はペリ環状反応の代表的な反応であり,軌道対称性則やフロンティア軌道理論により明快に説明されている。しかし置換基によってはフロンティア軌道の予測は実験値と全く一致しない場合がある。これら不一致の原因をラジカル性の大小から明快に説明した。
|