研究課題
実在系における反応過程の中でも、特に大自由度複雑系である生体分子や炭素クラスターに対して、非定常非平衡反応過程の動力学を解析する手法を開拓した。非定常性を抽出するためにウエーブレット変換を用い、さらに重要な自由度に縮約するために特異値分解を適用することで、大自由度系の反応過程における重要な反応自由度の抽出を行った。この方法は非常に一般的に有効である。この手法を、アデニレートキナーゼにおける大変形運動の分子動力学データや、脂肪酸の代謝に関連するタンパク質1TIBの分子動力学データ、さらには強レーザー場中の炭素クラスター解離過程の動力学データの解析に適用して、その有効性を検証した。アデニレートキナーゼでは、従来知られていた蝶番的な変形運動に加えて、2次構造が部分的に壊れる集団運動の可能性を指摘した。1TIBでは、ドッキング過程で重要となる集団運動の卓越性を示し、機能発現に関して近年提唱されたpopulation shift説の可能性を見出した。炭素クラスターでは、レーザー場中に置ける振動エネルギーの分配と再集中の過程を見出し、そのメカニズムを解明する端緒についた。以上の時系列解析で重要な役割を果たす特異値分解に関しても、ランダム行列理論の立場から解析を行った。特にラゲール分布と固定跡分布に関して特異値の一体分布の厳密解を求め、数値計算との一致を確認した。これらのランダム行列理論は、時系列解析において、重要な自由度を抽出するために有用となることが予想される。実在系の反応過程に対する応用は今後の課題である。
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Advances in Chemical Physics (To be published)
Proceeding of the 2009 International Conference on Parallel and Distributed Processing Techniques and applications (To be published)
Journal of Chemical Physics 130
ページ: 124116(7)
Ananls of Physics 324
ページ: 2278-2358