研究概要 |
最も重い荷電レプトンであるτレプトンの崩壊を使って標準模型を超える物理の効果とその探索方法を理論的に研究した.特に,標準模型を超える理論のCP対称性の破れやレブトン数の破れを研究し,フレーバーファクトリーにおいて探索できるスピン偏極に依存した物理量を中心に予測をした. (1) CP対称性の破れを探索する方法の開発. τレプトンの崩壊(τ→Kπν)を用いてτレプトンのスピン偏極崩壊分布に現れるCPの破れを研究した.e^+e^-→τ^+τ^-の過程で生成されるτ,反τレプトン対の各々が2体崩壊τ→πνおよび3対崩壊τ→Kπνに崩壊する全過程を考慮した.生成されるτレプトン対のスピン相関を利用し,さらに片方のτの2対崩壊のπ中間子角度分布を測ることで,3体崩壊τ→Kπνの崩壊分布のスピン偏極度に比例したCPの破れを取り出せることを明らかにした.この3体崩壊のハドロン形状因子も研究した. (2) 超対称性を破る項のタウレプトン数の破れへの効果. 超対称なシーソー模型に含まれる非常に重い粒子10^<12>~10^<15>(GeV)が低エネルギーの有効理論に及す影響を,重い粒子を質量の重い順に積分することで研究した.模型の重いスカラー場は超対称性の破れでフェルミオン(右巻きニュートリノ)の質量と異なる質量を持つ. この質量の違いを考慮すると、軽いスカラーレブトンの質量項に重い粒子の超対称性の破れ影響があることが示せる. 超対称の破れの項の大きさを数百TeV程度にとると、ヒッグス粒子の質量項やレプトンフレーバーの破れに大きな寄与があることを明らかになった.その結果,ヒッグスポテンシャルの超対称なμ項の大きさを小さく取ることが出来,最も軽いニュートラリーノのヒグシーノ成分がふえ暗黒物質の残存量が観測と一致する.同じ効果がレプトン数の破れ:τ→μγ.μ→eγの崩壊過程へも寄与するのでこれらの崩壊も研究した.
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