宇宙の初期には宇宙は水素とヘリウムという単純な元素しか存在しなかったのに対して、現在は多種多様な元素が観測されている。これらは、星の中で炭素、酸素、窒素などが合成され、さらにそれらが星の最後に起こる爆発現象である超新星爆発によって宇宙空間にまき散らされた結果である。このような宇宙における化学進化を考える上で、超新星爆発の発生率がどのように時間とともに変化してきたかは重要な情報となる。超新星爆発にはIa型と呼ばれる比較的小質量の星に起因するものとII型と呼ばれる大質量星によって引き起こされるものの2種類がある。Ia型超新星は宇宙のダークエネルギー探査に利用され、近年盛んに大規模なサーベイが行われているが、II型超新星については十分に観測されているとは言い難い。この2つの種類の超新星はそのスペクトルを見ることで区別できることから、本研究ではすばる望遠鏡の広視野カメラSuprime-Camのグリズムフィルターを用いて、無バイアスの変光天体の分光サーベイを行い、各種超新星の発生率の進化を調べることを目的とした。すばる望遠鏡での観測は平成20年度に2晩認められたが、天候の影響で1晩しかデータを得ることができなかった。そのため、当初の研究目的を達成することはできなかったが、別のグループが取得したデータを利用することで、グリズムフィルターで観測したデータから明るさの変わっている天体を見つける手法を確立することができ、シミュレーションと同等の観測限界で観測できることを確認した。一方、波長較正、フラックス較正のためにはそのためのデータを慎重に取得しないといけないことが明らかになった。
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