金属ナノ構造体に局在化した光電場と蛍光分子が強くカップリングし、蛍光強度が大幅に増強される現象が報告されている。我々がDNAを鋳型とした銀ナノ粒子の作製を行ったところ、核酸塩基の種類によって作製される銀ナノ粒子のサイズが異なることや作製した銀ナノ粒子が光励起によって可視域に強い発光を示すことを見いだした。通常、DNAは可視域において発光しないことから銀ナノ粒子とDNA間の相互作用が発光に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では銀ナノ粒子の作製条件を調整してDNAと結合した銀ナノ粒子の構造制御を試みることやその発光特性についての分析を行うことにより、発光メカニズムの詳細について検討を行った。 DNAが結合した銀ナノ粒子は単一塩基で構成される一本鎖DNA (オリゴヌクレオチド) を含む緩衝溶液へ硝酸銀水溶液を加えた混合溶液に紫外光を約5分間照射することにより作製した。吸収スペクトルが銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収に由来するピークを示すことや透過電子顕微鏡 (TEM) 像から、粒径が10nm〜50nm程度の銀ナノ粒子の形成を確認した。蛍光相関分光法による測定から発光ナノ粒子のサイズが約10nmであることがわかり、TEM像の結果と併せることにより単一銀ナノ粒子が発光していることが示唆された。また、銀ナノ粒子を基板上に固定化して励起光を照射すると発光が観察されるが、照射時間が一時間程度までは発光強度が増加する現象が見られた。これは発光に寄与する成分が光照射で銀ナノ粒子上に生成するためだと考えられる。
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