研究概要 |
バクテリオロドプシン(BR)など古細菌型ロドプシンの光反応は100%のサイクル反応が常識であったが、我々はAnabaena sensory rhodopsin(ASR)が100%のフォトクロミズム反応を示すことを発見した(JACS, 2007)。BRとASRの結晶構造は類似しており、どのようにしてよく似た蛋白質構造が、レチナールという同一分子の全く異なる光反応をもたらすのか、そのメカニズムは未解明である。本研究では、遺伝子工学的な手法によって作製したASRの変異蛋白質の分光学的な解析を行うことで、ASRの特異なフォトクロミズム反応のメカニズムを明らかにすることを試みた結果、以下の研究成果が得られた。 ロドプシンのサイクル反応、フォトクロミズム反応のいずれも最初の光反応はC13=C14部位のピコ秒時間領域での異性化反応であるが、ミリ秒の時間領域で起こる熱異性化反応の部位が異なるため、それぞれの反応過程が実現する。低温赤外分光をASRの後期中間体であるL中間体に対して適用したところ、ASRに特異的な細胞質側での構造変化を明らかにすることができた。このような構造変化が信号伝達に必須であるとともに、フォトクロミズム反応にも関わるものと考えられる。 本研究においては、光反応がサイクル型になるバクテリオロドプシン(BR)やクロライドポンプのハロロドプシン(HR)、光センサーであるセンサリーロドプシンI(SRI)、センサリーロドプシンII(SRII)などの光反応に関しても特徴的な構造変化などを明らかにすることができた。
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