自然界におけるあらゆる物質は動いており、「メカニカルな動き」の研究は大切である。しかし、分子レベルでの構造や性質の変化が、バルク構造体としてどのような動きとなって現れるかについては、両者の間に大きなギャップがあり、まだほとんどわかっていない。マクロ構造体を外部刺激によって直接メカニカルに動かすことができれば、学術的にも応用面からも大変有意義である。有機固体光化学を専門とする申請者にとって、「動く結晶」を作ることは長年の夢であった。最近、出発物質と生成物の結晶構造がほとんど変わらない単結晶-単結晶反応であっても、反応の進行とともに結晶表面にナノレベルの凹凸が現れ、反応が終結すると元の平らな表面に戻ることがわかり、動く結晶作りの第一歩を踏み出すことができた。今回、本特定領域研究において、研究課題「フォトクロミズムを利用したメカニカルに動く結晶の探索と創製」を推進した。その結果、アゾベンゼン、サリチリデンアニリンなどの単結晶は、紫外光照射により曲り、照射を止めるか可視光を照射すると元の形に戻る屈伸運動が、可逆的に繰り返されることを見い出した。これにより、結晶フォトクロミズムを利用したメカニカル機能の創出の有効性を明らかにすることができた。
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