本研究の目的は、「Co-Fe系シアノ架橋金属錯体の配列ナノ空間のゲスト濃度を外場(酸化・還元、電場印加、水蒸気分圧、光励起、等)により変化させ、ホストーゲスト相互作用を通じて物性制御を目指す」ことである。 まず、Co-Fe系シアノ錯体およびNi-Fe系シアノ錯体において、酸化・還元によりCo-Fe系薄膜のカチオン濃度を制御し、その物性相図を明らかにする。特に、カチオン濃度を制御することにより、薄膜の強磁性転移温度が制御できることを見出した。さらに、Co-Fe系錯体とNi-Fe系錯体とを物理的に接合しし、電圧印加により物質移動が制御できることを見出した。この現象は、正負の電圧において可逆的である。この物質移動を利用して、電圧誘起磁性をデモンストレーションした。この現象は応用上有効であるので、特許出願(守友浩、柴田恭幸、「電圧駆動素子、電池、表示装置、磁性制御装置および反転対称性制御装置」、特願2008-284295、筑波大学、2008/11/5)を行った。 他方、Co-Fe系錯体薄膜を減圧することにより、結晶水の量を精密に制御した。この物質は、温度誘起の電荷移動相転移を示すことが知られている。電荷移動相転移の臨界温度は、結晶水量に強く依存することが明らかとなった。結晶水量が多い領域では、減圧に伴い臨界温度が上昇した。しかしながら、結晶水量がある値以下になると、電荷移動相転移自体が消失した。こうした現象は、ゼオライト水とリガンド水といった二種類の結晶水が存在し、その脱離圧力が異なることに起因する。
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