研究課題
本研究の目的は、「Co-Fe系シアノ架橋金属錯体の配列ナノ空間のゲスト濃度を外場(酸化・還元、電場印加、水蒸気分圧、光励起、等)により変化させ、ホストーゲスト相互作用を通じて物性制御を目指す」ことである。本年度の研究成果を列挙する。1.Na-K固溶シアノ錯体の構造相図の決定:Co-Feシアノ錯体は、ゲストであるカチオンをNaからKに置換すると、高スピン相から低スピン相への構造相転移を起こすことが知られている。そこで、Na-K固溶体を作成し、構造相図を決定した。申間組成においては、高スピン相と低スピン相との二相共存が観測された。これはNa濃度が自発的に生成し、相分離が起こったものと考えられる。2.プルシャンプルー格子の普遍的熱応答の発見:プルシャンプルー格子の格子定数の温度依存性を系統的に調べた。その結果、格子定数の増大にともない、熱膨張係数が正から負へと連続的に変化することを発見した。この現象は、温度上昇に伴いシアノ鉄イオンの剛体としての回転運動が励起されるためと考えられる。3.シアノ錯体の圧力誘起相転移の発見:Mn化合物とZn化合物のCN伸縮振動モードの圧力効果を調べた。圧力の印加に伴い、CN伸縮振動モードは高エネルギー側にしふとする。が、臨界圧力を境に、ほぼ一定になる。この臨界圧力でシアノ鉄イオンの回転変位が誘起されると考えられる。4.Co-Feシアノ錯体の水位置の決定:MEM-Roetveldの予測性を利用して、Co-Feシアノ錯体の水位置を非経験的に決定した。さらに、熱処理によりゼオライト水が選択席に脱離することを実験的に明らかにした。5.シアノ錯体の光誘起効果:Co-Feシアノ錯体薄膜の超高速分光を行い、電荷移動励起の緩和プロセスを明らかにした。
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