研究概要 |
本研究の研究目的は,主として充填スクッテルダイト化合物の純良単結晶を育成し,その特徴的なカゴ状構造に起因した種々の物性をドハースファンアルフェン(dHvA)効果の実験から、フェルミ面などの電子状態を明らかにするとともに、カゴ状構造を持つ他の物性系を探索していくことである。 本年度は、まず、首都大学・佐藤英行教授との共同研究で弱強磁性体LaFe_4As_<12>のドハースファンアルフェン効果の実験をおこない、そのフェルミ面を明らかにした。これまでのバンド計算が予想した結果とは異なっていた。その食い違いが弱強磁性の出現と関係しているのか、今後明にしていく必要がある。 次に、他のカゴ状耕造を持つ物質として、Rh_<17>S_<15>,RCd_<11>(R:希土類元素)、YbIr_2Zn_<20>の単結晶育成とその物性研究を行なった。Rh_<17>S_<15>は超伝導転移温度Tc=5Kの超伝導体である。この系の超伝導特性を調べ、低いTcに比べ上部臨海磁場は約20Tと大きな値を持つことを見いだした。これは、Rh_<17>S_<15>の電子比熱係数が約100mJ/K^2molと大きな強相関系であり、Rhの大きな状態密度がフェルミ準位にあることを示していることと思われる。また、RCd_<11>およびYbT_2Zn_<20>は、それぞれ希土類元素がCdやZnによってカゴ状に取り囲まれ、隣同士の希土類元素が約6~7Aと比較的長くなっている。そのため、RCd_<11>では希土類元素の4f電子の局在的な性格が見られた。ところが、YbIr2Zn20の基底状態は4f電子が遍歴的な重い電子状態にあることがdHvA効果の実験から明らかとなった。これが、数多くのZnと4f電子との混成効果によるものなのか、今後の研究の課題となった。
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