研究概要 |
本年度は、主にZn_6Sc近似結晶において、正20面体クラスター内・外のナノ空間を"場"とした超構造の作製と構造及び物性の評価を行った。具体的には、Zn_6Sc単結晶を作製し、同一試料について相転移に伴う構造および物性変化を明らかにすることを目的とした。単結晶試料はフラックス法を用いて作製し、電気抵抗測定により157Kにて明瞭な相転移を示すことを確認した。この単結晶試料について、熱緩和法による比熱測定を5〜300Kの温度範囲で行い、転移ピークを詳細(0.2K刻み)に調べた。また放射光(ESRF、D2AM)を用いて転移点(Tc)より高温側で散漫散乱の温度変化を、Tc以下で超格子反射強度および格子ひずみの温度変化を調べた。 比熱測定からはTc=157Kで明瞭な比熱異常が観測された。これはエントロピー変化を示しており、四面体の配向の規則化に対応するものと考えられる。超格子反射(47/2-1/2)の積分強度の温度依存性からは、Tcより高温側に散漫散乱によるテイルが観測され、Tc以下でブラックピークへと移行することが判明した。これは、Tc以上から短距離秩序が次第に発達し、Tcで長距離秩序が形成されることを示すものである。また、(6, 6, 0)ブラッグ反射のピーク形状の温度依存性から、157Kから159Kの温度範囲でピークの分裂が観測された。これは長距離秩序の形成とともに格子が歪み、斜方晶以下に対称性が低下することを示すものである。 以上より、相転移点より高温側から4面体配向の短距離秩序が形成され、転移点で格子ひずみ、電気抵抗および比熱異常を伴って4面体の配向が一斉に規則化し超格子構造が形成されることが判明し、構造と物性の対応が明らかとなった。
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