研究概要 |
本年度は、主にCd_6M(M=Nd,Gd,Tb)において、電気抵抗、比熱及び磁化率の測定を行うことで規則-不規則相転移に関する詳細な情報を得ること、および、Cd_6M近似結晶の磁気特性を調べることを目的として研究を行った。電気抵抗測定より、Cd_6Nd,Cd_6Gd,Cd_6Tbにおいてそれぞれ、146,185,170Kで異常が観測された。また、比熱にも異常が見られ、電気抵抗の異常温度とよく一致した。また、電気抵抗において降温・昇温時にヒステリシスが見られないこと、比熱においてエントロピーの開放が起こることから、二次に近い一次の構造相転移が起こっているものと考えられる。比熱のピークから、Cd_6Nd,Cd_6Gd,Cd_6Tbの単位胞あたりの転移エントロピーは、それぞれ、0.49kB,0.30kB,0.43kBと見積もられた。本相転移が、4面体の配向が秩序化したものと考えて転移エントロピーΔSを計算すると、1.39kBとなり、実測値はこの値に比べて小さいことが分かった。この理由としては、点欠陥などの構造欠陥の存在により、4面体の配向の規則化が部分的に抑制されたことが考えられる。一方、高温における逆磁化率は直線的でCurie-Weiss則に良く従い、いずれも室温では常磁性状態をとることが分かった。Curie-Weiss則によるフィッティングを行ったところ、得られた有効磁気モーメントは、3価の自由イオンの計算値と良く一致し、近似結晶中の希土類の価数が3価で、そのスピンが良く局在していることが分かった。一方、50K以下の低温では、Cd_6Nd,Cd_6Gd及びCd_6Tbにおいて、それぞれ、5,23,24Kにおいて異常が観測され、磁気転移が起きていることが判明した。このことから、正20面体クラスターの頂点に局在したスピンが室温ではランダムな方向を向いていたのが、低温では秩序化することが分かった。
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