研究課題
集団的な運動を伴う水分子の挙動は生体内の構造水、物質表面に結合した表面水あるいは細孔内のゼオライト水をはじめ、地球内部や地球外惑星などの極限状態にある水も含めて、現在でも分野間の枠をこえて盛んに研究されている。さらに、最近の理論科学的な発展から、新しい水の挙動が次々と明らかにされている。例えばCarbon-Nanotube内の狭い空間に取り込まれた水の運動は、その狭い環境のために水から氷になる相転移が臨界点をもち、水分子としての連続的な相変化が観測されることや水が空孔内に導入される時にチューブ内の疎水性ナノ環境の影響で時間差無しで取り込まれ、水分子の水素結合鎖を作ることが予想されている。これに対して実験的な検証が行われ、チューブ内の水分子は理論でははっきりと予測できなかった室温で氷化転移を起こすことが確認された。現在、このような特殊な媒体中で理論と実験の両面から極限状態の水の性質が明らかにされつつある。今年度は東北大学の松井先生と共同研究で得られた[Co(H2bim)3](TMA)の多孔質結晶の中に形成されたナノチューブ状の水分子クラスター(Water Nanotube : WNT)について物性測定を行った。誘電率測定では相転移点付近で誘電率の増加が観測され、これは融解点に相当することが分かった。一方、WNTのIR測定では差スペクトルをとることにより、伸縮振動をとることに成功した。このOH伸縮振動は3620cm-1のところにアサインされ、氷のOH伸縮振動の3250cm-1や水のもの3408cm-1に比較してより低端数側にシフトしており、どちらかというと水蒸気の領域3657cm-1から3756cm-1のものに近いことが分かった。WNTは非常にソフトな水であり、水蒸気のように水分子がクラスター化している描像が明らかになった。
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http://www.rs-kagu.tus.ac.jp/tadokoro/