本年度は、1. プラズマ放電においてYAGレーザー散乱で測定されたダストの空間分布の解析を進め、プラズマ中での存在密度や大きさなどを数値化し、ダストが多く放出される放電条件を明らかにすること、2. シミュレーションによる運動モデルとの比較を行うこと、が主な目的であった。 1. 様々な放電についてダスト粒子による散乱信号の強度や発生数の空間分布をまとめると共に、ダストの放出現象の特性を明らかにした。特に、ディスラプション時に多くの散乱信号が観測され、プラズマが消滅した直後も容器全体を飛翔していることが初めて明らかとなった。直後のプラズマ放電でも多くのダストがSOL領域を飛翔するが、セパラトリクスに近づくにつれ数も大きさも減少する。この結果、対向材表面から放出されたダストは昇華されつつSOL領域でプラズマ相互作用を受け運動するが、閉じ込めプラズマ領域への侵入は非常に少ないことが実験結果から判明した。 2. ダイバータ付近から発生した大きさの異なるダストが昇華に至るまでの時間と周辺プラズマへの侵入距離についてシミュレーション計算した結果、通常観測される半径0.1mm以下のダストは200ms以下の時間でSOLにて昇華に至ることが示された。これらの計算結果は、ダストを消滅まで追尾した高速カメラの測定結果やSOLにおいて多くの散乱信号が観測されたことを支持する。 3. さらに、本研究の対象であるダスト粒子を、JT-60U真空容器内の約180カ所で収集することができた。それらの重量、形状および水素同位体の蓄積量などの成分分析を今後実施することにより、プラズマ相互作用により対向材の表面で発生、あるいはプラズマが直接当たらない位置へ輸送され蓄積されるダストの挙動を理解し、総合的な研究成果を得るための貴重な試料となる。
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