研究概要 |
ガレクチン1はβガラクトシド骨格を特異的に認識するレクチンであり、単量体あたり1ヶ所の糖鎖結合部位を含む。生体中ではダイマーとして存在し、細胞表面の糖脂質・糖蛋白質への配位を介して細胞接着に関わる。ダイマーに2ヶ所含まれる糖鎖結合部位の挙動に関して、アロステリック効果の有無およびその原因となる分子機構を解明することを目的として実験を行った。 蛍光分光法を用い、糖結合によってトリプトファン蛍光の波長および強度に変化が現れることを確認した。このスペクトル変化は側鎖環境の疎水性増大を意味するものであり、糖結合によりTrp側鎖π電子と糖アルキル鎖の疎水性相互作用によるものと説明される。また、シフト量の糖濃度依存性から平衡定数を求め、文献値と一致することを確認した。この測定結果からヒル係数を求め、アロステリック効果の有無を評価した。 229nm励起紫外共鳴ラマンを用い、糖鎖結合に重要な役割を果たすTrp68, His44, His52に関して、糖結合に伴う構造および周辺環境の変化を検出した。Trpのバンドのスペクトル変化から、糖結合に伴い疎水性が増大すること、水素結合の状態およびペプチド主鎖-Trp側鎖の二面角x^<2, 1>に変化が起こらないことを見いだした。これらの結果は、Trpのラマンバンドが「糖結合マーカー」として利用可能であることを示唆する。またHisのプロトン化状態を示すHisD_2^+バンド強度のpH依存性を測定したところ、pKaの値が糖結合平衡定数のpH依存性と対応することが見いだされた。この結果は、Hisのラマンバンドが「糖結合能力マーカー」として利用可能であることを示唆する。
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