研究概要 |
(1)波長可変な近赤外光を励起光源とするピコ秒時間分解ラマン分光システムの製作 波長1064nmと775nmの近赤外光パルスをプローブ(ラマン励起)光源とするピコ秒時間分解ラマン分光システムを製作した.1064nm励起のシステムの検出器にはInGaAsアレイ検出器を,775nm励起のシステムの検出器には液体窒素冷却CCD検出器を用いた. (2)カルテノイド類のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 1064nm励起のシステムを用いて,近赤外領域に過渡吸収を示すβ-カロテンのS_2(1Bu^+)状態のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定に成功した.さまざまな電子状態(S_0,S_1,S_2状態)の全対称C=C伸縮振動数を振電相互作用に基づいて解析した[J.Mol.Struct.(Prof.A.Barnes Special Issue),印刷中(2010)]. (3)フラーレンとフラーレンナノ粒子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 フラーレン分子のT_1状態の過渡共鳴ラマンスペクトルを,775nm励起のシステムを用いて測定した.また,量子化学計算に基づく実測スペクトルの解析を行っている. (4)ピコ秒時間分解赤外分光法によるπ-スタックしたHT-ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の光励起ダイナミクスの研究 立体規則性のあるポリ(3-ヘキシルチオフェン)スピンコート膜のピコ秒時間分解赤外吸収を77.5Kにおいて測定した.遅延時間2psと100psにおいてピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルを測定し,長寿命と短寿命の過渡種をそれぞれ同定した[Synth.Met., 159, 809 (2009)].
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