4種類の古細菌ロドプシンは、光駆動ポンプとして光をエネルギーに変換するか、光センサーとして光を情報に変換する。共通の構造基盤をもとに、進化の過程でそれぞれの機能のため最適化されたものと考えられる。本研究では、4種類の古細菌ロドプシンが機能するメカニズムを構造的基盤のもとに理解する。このため、我々が世界をリードする低温赤外分光法、生理的な温度での測定が可能なステップスキャン時間分解赤外分光法、水溶液中での測定が可能な全反射赤外分光法などを用いた分光解析を行ったところ、以下のような成果が得られた。 ステップスキャン時間分解赤外分光をバクテリオロドプシン(BR)の内部結合水に対して適用し、室温での水の水素結合変化が低温のものと同じかどうか、比較検討したところ、中間体に応じて温度依存性が異なる結果を得た。さらに、クロライドポンプとして機能するハロロドプシン(HR)の初期反応を時間分解過渡吸収分光を用いたハライド依存性測定により明らかにした。 一方、光を情報へと変換する正の走光性センサーであるセンサリーロドプシンI(SRI)は試料調製の条件が困難であることから他のロドプシンと比較して研究が進んでいなかったが、測定条件を最適化した結果pH依存的な構造変化を明らかにした。負の走光性センサーであるセンサリーロドプシンII(SRII)については全反射分光法の解析を行う。SRIIについては、光励起直後に観測される蛋白質の構造変化を詳細にモニターし、光を蛋白質内部に取り込むためのメカニズムを明らかにした。
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