本研究ではフェムト秒過渡吸収および蛍光測定等の超高速分光法を主たる測定手段とし、不均一複雑系である高分子鎖内での励起エネルギーや電荷のマイグレーション過程、さらに高分子鎖の構造変化などの励起ダイナミクスを解明を目的としている。今年度においては以下の研究を行った。 (1)ペリレンジイミドをペンダントとしたポリイソシアニドの合成とエネルギーマイグレーション過程の解明。嵩高い平面状分子をペンダントとしたポリイソシアニドでは主鎖が4_Iヘリカル構造をとるため、平面状分子がface-to-faceのスタッキング構造を形成し、強く相互作用することが知られている。今年度は可視域に大きい吸収をもち電子受容性の高いペリレンジイミドをペンダントとしたポリイソシアニドを合成し、エネルギーマイグレーション過程を明らかにした。フェムト秒レーザーで高強度励起することで生じるエネルギーアニヒレーション過程を観測し、その速度から一段階のエネルギーホッピング速度を求めた。その結果以前検討したポルフィリンポリマーより高速なエネルギーマイグレーションが起きていることが確認された。 (2)オリゴチオフェンーオリゴシリレン交互共重合体の高分子鎖内エネルギーマイグレーション過程の解明。オリゴチオフェンーオリゴシリレン交互共重合体では一重項エネルギーがオリゴチフェオン部分をホッピングする。その過程を蛍光アニソトロピー減衰を求めることで実測した。さらに構造の影響を明確にするためにモデルとなるオリゴマー系で検討を行った。その結果σ-π共役により高速なエネルギーホッピングがおきていることが明らかになった。
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