二つのクロモフォアが共有結合で連結している「二中心複合分子系」において、励起状態挙動とその高次光機能を、時間分解分光および時間分解磁気共鳴実験からに明らかにすることを目的とした。そのためπ電子化合物であるクロモフォアを選び両者を部分回転が可能な架橋子で連結した二中心系を設計した。まず、2つのピレンをアセチレン基2個で連結した二量体において、時間分解発光測定および異方性測定を行った。その結果、比較単量体とは異なって、二量体では、3つの発光成分を観測した。これらの解析により、溶液中で高い光励起状態で2つのピレン二面角がほぼ垂直になる安定構造に構造変化しながら、発光する過程をみいだした。また、2つのポルフィリンをn個のアセチレン基またはP-フェニル基で架橋子したポルフィリン二量体を用いて、発光ダイナミクスに働く長距離相互作用を明らかにした。1方のポルフィリンに中心金属イオンとして銅(II)イオンをもち、不対電子スピンがあるような二量体において、不対電子を持たない部分の項間交差過程が二中心相互作用によってどのように変化するのか、および架橋子の結合依存性について明らかにした。
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