研究概要 |
二つのクロモフォアが共有結合で連結している「二中心複合分子系」において、励起状態挙動と、高次系分子に特有に現われる光機能を、特に凝縮相における溶媒による揺動と二中心間相互作用の観点から、明らかにすることを目的とした。蛍光性分子であるピレンを、アセチレン基で連結した二量体においては、2つのピレン間の距離は固定されているが、アセチレン軸回りの回転に自由度をもち、互いの配向すなわち二面角が固定されていない。一連のアセチレン連結ピレン二量体において、時間分解発光測定・および蛍光異方性の測定により、励起状態において特異的にピレン二面角変化と電子状態緩和が連動する過程を見出した。また、量子化学計算から基底状態では二量体のエネルギーは二面角に依らないが励起状態においてはその遷移エネルギーが二つのピレンの二面角に大きく依存することが明らかとなった。すなわち、高い励起状態に励起されたピレン二量体は最低励起一重項状態に緩和後,励起状態で最も安定な構造にピレン二面角をかえる。このプロセスはピレンユニットの側鎖に依存し、また溶媒の粘性を変えると遅くなることが明らかとなった。
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