研究概要 |
1. 交差ジェットー赤外分光装置の開発と最適化を行った。準備実験として、NH_3と希ガス原子との非弾性衝突による回転準位励起の観測を行った。ジェット流が90度で交差するようにパルスノズルを設置し、交差点とノズル先端までの距離を30mmとした。NH_3と希ガスの衝突エネルギー(重心系)はHe、Arで各々9.8、20kJ/molである。交差点に赤外レーザーを入射し、NH_3のV_1振動を測定した。衝突がない場合にj=0, 1からの遷移のみが観測されたのに対し、希ガスと衝突させるとj=2-5の高回転準位からの遷移が観測された。非弾性衝突後のNH3の回転温度はHe、Arで各々約100、150Kと見積もられ、衝突エネルギーとの相関が現れることを確認した。 2. 交差ジェットのピロール(Py)クラスターへの適用を試みた。衝突がない場合、単量体から4量体までのシャープなNH伸縮振動が観測された。それに対し、希ガスと衝突させるとシャープなバンドは消失し、3400Gm^<-1>を中心としたブロードなバンドが強く観測された。液体PyのNH伸縮振動が3403cm^<-1>であることから、ブロード吸収は液体と類似の水素結合構造を持つクラスターによるものであると考えられる。ピーク周波数は衝突エネルギー(希ガス原子の種類)と相関しており、非弾性衝突によるクラスター温度制御の可能性が示唆される。 3. 赤外キャビティリングダウン分光法と量子化学計算により、ピロール溶媒和クラスターの水素結合構造の解明を行った。ピロールの水素結合サイトは、供与体のNH基と受容体のπ電子の2つがある。水、メタノール、エタノールを溶媒とした1 : 1クラスターにおいては、NH基が水素結合に関与する構造、メタノールを溶媒とした1 : 2クラスターでは、直鎖型メタノール2量体がNH基とπ電子に水素結合するσ-π橋架構造であることを解明した。
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