研究課題
蛋白質運動に不可欠な水分子集団移動の有無やその容態を分子動力学計算トラジェクトリから検討する計算コードを開発した。グルタミン酸脱水素酵素の1ナノ秒トラジェクトリにおいて見出された複数のドメイン開閉運動時間領域に対して適用した結果、ドメイン運動に連動しながら、活性クレフト内に存在する水分子のコヒーレントな集団運動が発生することが明らかになった。今後、このような現象を実験的に明らかにする方法を検討中である。蛋白質立体構造データバンクの中ではあまり利用されていなかった蛋白質周辺での水和水分布について、その構造情報を抽出し、蛋白質表面の11種類の親水性アミノ酸残基に含まれる酸素、窒素原子周辺での経験的水和水確率分布関数を得た。また、その分布関数を用いて、蛋白質の水和構造予測を可能とする計算コードを開発し、その適用可能性を複数の蛋白質について調べた。経験的水和水確率分布関数は、結晶構造解析における構造精密化の際にも参照データを与えるので、構造精密化した蛋白質の水和構造モデルの検定方法も考案した。ドメイン運動に伴う水和構造変化、蛋白質会合での水和の役割などを詳細に解析するために、X線構造解析を試み、機能発現時に予想される構造・水和構造変化の可視化を目指している。昨年度作出したグルタミン酸脱水素酵素の補酵素結合型結晶、チバクロン青色素分子結合のX線回折強度データ収集を実施した。補酵素結合型結晶は分解能の向上が必要であり、また色素結合型では、色素の占有率がモデル構築を可能とするレベルではなかった。蛋白質ジスルフィド結合異性化酵素の酸化還元に伴う構造及び溶媒和の変化をX線小角散乱と核磁気共鳴を組み合わせた実験で明らかにした。
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Journal of Physical Chemistry B (印刷中)
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